長期優良住宅とは?メリットやデメリットについても解説
長期優良住宅についてご存じでしょうか。聞いたことはあるけれど、はっきりとした意味はわからないといった方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、長期優良住宅と呼ぶには、対象の住宅について、所管行政庁の認定が必要となるのです。
この記事では、長期優良住宅の意味や認定基準について紹介します。さらに、長期優良住宅の認定を受けた場合のメリットやデメリットについても解説しています。
長期優良住宅について知らない方は、その意味や認定基準を知ることができます。その上で、知っている方も含めて、長期優良住宅の認定を受けるメリットやデメリットについて確認してみてください。長期優良住宅の認定を受けるかどうかの選択が、必要になった際の参考にしていただければと思います。
1. 長期優良住宅の基本
1-1. 長期優良住宅とは何か?
長期優良住宅とは、住宅を長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられており、一定の基準に適合することを都道府県知事や市町村長に認定された住宅のことです。
1-2. 長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅認定制度は、一戸建て、共同住宅(マンションやアパート)等のどちらも利用できます。この記事では以降、「新築一戸建て」を対象として解説していきます。
長期優良住宅の認定基準の概要は、以下の通りです。
長期優良住宅の認定基準の概要
- 劣化対策
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。
⇒住宅性能表示制度の劣化対策等級や構造の種類に応じた基準にて判断されます。 - 耐震性
極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。
⇒住宅性能表示制度の耐震等級や品確法に定める免震建築物に該当するか等により判断されます。 - 維持管理・更新の容易性
構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管について、維持管理(点検・清掃・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
⇒住宅性能表示制度の維持管理対策等級にて判断されます。 - 省エネルギー性
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。
⇒住宅性能表示制度の断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級にて判断されます。 - 居住環境
良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。
⇒地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図ること。 - 住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
⇒75㎡以上(1階の床面積が40㎡以上) - 維持保全計画
建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
⇒該当する部分・設備について定期的な点検・補修等に関する計画が策定されているかが基準とされます。 - 災害配慮
自然災害による被害の発生の防止又は軽減に配慮されたものであること。
⇒災害発生のリスクのある地域においては、そのリスクの高さに応じて、所管行政庁が定めた措置を講じているかが基準とされます。
長期優良住宅の認定基準について、新築一戸建ての場合を紹介しましたが、認定基準の詳細や増築・改築、マンションにおける認定基準等については、国土交通省ウェブサイトに情報がありますので、ご確認ください。(出典:国土交通省「長期優良住宅のページ」 )
2. 長期優良住宅のメリット・デメリット
2-1. 長期優良住宅のメリット
長期優良住宅に認定されると以下のようなメリットがあります。
長期優良住宅の認定を受けるメリット
- 住宅ローン控除の優遇
借入限度額や控除期間の優遇があります。
<新築住宅に、令和4年~令和5年までに入居した場合>
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | 控除限度額 (年間) |
---|---|---|---|---|
長期優良住宅 | 5,000万円 | 13年間 | 0.7% | 35万円 |
一般の住宅 | 3,000万円 | 21万円 |
<新築住宅に、令和6年~令和7年までに入居した場合>
令和6年1月以降に建築確認を受けた新築住宅の場合、省エネ基準を満たす住宅でない場合は住宅ローン減税を受けられません。
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | 控除限度額 (年間) |
---|---|---|---|---|
長期優良住宅 | 4,500万円 | 13年間 | 0.7% | 31.5万円 |
一般の住宅(※) | 2,000万円 | 10年間 | 14万円 |
※令和5年12月31日までの建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものが対象
- 不動産取得税の軽減
新築住宅に係る不動産取得税について、課税標準からの控除額が一般住宅の特例より増額されます。
※令和6年3月31日までに新築された住宅が対象
住宅の種類 | 課税標準からの控除額 |
---|---|
長期優良住宅 | 1,300万円 |
一般の住宅 | 1,200万円 |
- 登録免許税の軽減
新築・未入居の住宅用家屋について、所有権保存登記等に係る税率が一般住宅の特例より引き下げられます。
※令和6年3月31日までの取得が対象
住宅の種類 | 所有権保存登記 | 所有権移転登記 |
---|---|---|
長期優良住宅 | 0.1% | 0.2% |
一般の住宅 | 0.15% | 0.3% |
- 固定資産税の軽減
新築住宅に係る固定資産税の減額措置の適用期間が一般住宅より延長されます。
※令和6年3月31日までに新築された住宅が対象
住宅の種類 | 期間 | 減額される額 |
---|---|---|
長期優良住宅 | 5年間 | 120㎡までの部分について1/2の額となる |
一般の住宅 | 3年間 | 120㎡までの部分について1/2の額となる |
- 住宅ローンの金利引き下げ
住宅ローン「フラット35」を利用する場合、【フラット35】S(金利Aプラン)が適用され、金利が借入から10年間0.25%引き下げられます。
※令和6年3月31日までの申込受付分に適用 - 地震保険料の割引
住宅の耐震性に応じた地震保険料の割引を受けることができます。- 耐震等級割引
品確法に基づく耐震等級を有している建物の場合、以下の割引率が適用されます。
耐震等級2:30%
耐震等級3:50% - 免震建築物割引
品確法に基づく免震建築物の場合、50%の割引率が適用されます。
- 耐震等級割引
- 地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けられる
地域型住宅グリーン化事業の採択を受けたグループに属する中小工務店等が整備する木造の長期優良住宅について、補助金を受けることができます。住宅1戸当たり140万円(補助額上限)。
2-2. 長期優良住宅のデメリット
認定を受けるために、時間やコストがかかります。さらに、認定後もメンテナンスを行う必要があります。これらについて、デメリットとして、以下に挙げます。
長期優良住宅の認定を受けるデメリット
- 申請に時間がかかる
一般の住宅に比べて着工までに時間がかかります。長期優良住宅の認定申請後、所管行政庁の審査・認定を受ける必要があるためです。 - 申請のコストがかかる
申請手数料がかかります。金額は、所管行政庁により異なりますが、5~6万円程度かかります。また、ハウスメーカーなどに申請の代行を依頼する場合は、その手数料が10~20万円程度かかります。 - 認定後のメンテナンスが必要
申請時に作成した「維持保全計画」に従って、計画的に点検を実施し、必要に応じて調査・修繕・改良を行うこと、さらにその内容の記録を作成し保存することが求められます。
3. 長期優良住宅の認定を受けるためには
3-1. 長期優良住宅の申請方法
長期優良住宅の認定申請を行うためには、事前に「長期使用構造等であるかの確認の申請」が必要です。
これは、登録住宅性能評価機関に対して申請をして、当該機関が長期使用構造等であるかの確認を行い、申請者に対して確認書等を交付します。
その交付された確認書等と併せて必要な書類を準備して、所管行政庁に対して、長期優良住宅の認定申請を行います。
申請を受け付けた所管行政庁は、適合審査を行い、認定をするという流れになります。
申請に必要な書類等は専門的であり、知識を要しますので、費用はかかりますが、ハウスメーカー等に代行を依頼することも考えてみるとよいでしょう。
4. まとめ
長期優良住宅について、その内容や認定基準を解説しました。あわせて、長期優良住宅の認定を受けるメリットやデメリットについても紹介しました。税制度の優遇や地震保険料の割引、補助金の受け取りなどのメリットが存在する一方で、認定を受けるための時間やコスト、認定後も継続してメンテナンス等の手間がかかるということがわかりました。
長期優良住宅の恩恵を受けるためには、それなりに労力やコストがかかります。両者を比較して長期優良住宅の認定を受けるかどうかの検討をするのがよいと思います。その際は、専門家等に相談することで、判断が適切に行えると思いますので、そちらも考慮するとよいでしょう。
5. Q&A
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長期優良住宅とは、何ですか?
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住宅を長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられており、一定の基準に適合することを所管行政庁に認定された住宅のことです。
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長期優良住宅の認定を受けた場合、どのようなメリットがありますか?
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税制度や住宅ローン控除の優遇、住宅ローン(フラット35)の金利引き下げ、地震保険料の割引、補助金の受け取りなどのメリットがあります。