所有者不明土地は今後どうなるのでしょうか?相続登記の義務化についても紹介

所有者不明土地という言葉を聞いたことはありますでしょうか。名称からどのような土地かを想像することができるかと思います。この所有者不明土地は日本全国で増加し、社会問題となっています。

所有者不明土地の原因や問題点などを紹介したいと思います。その対策をすることで今後どうなっていくのかについても触れたいと思います。社会問題であると同時に相続が関係してきますので、身近な問題として知っておくとよいかもしれません。

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所有者不明土地は社会問題となっており、対策が施されています。その対策として、不動産登記の制度が見直されています。思わぬところで影響があるかもしれませんので、いざという時のために知っておいていただければと思います。

1. 所有者不明土地の概要

1-1. 所有者不明土地とは?

不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地や、所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。

1-2. 所有者不明土地はどのくらいある?

この所有者不明土地は、全国でどのくらいあると思いますか?

このような土地は日本各地に存在しており、その面積を合計すると、九州の面積よりも広いと言われています。所有者が分からないような土地が、こんなにも多くあるのに驚きませんでしたか。

1-3. 所有者不明土地になる原因

では、このような所有者不明土地になる原因は、どのようなものなのでしょうか。主な原因は、下記の通りです。

所有者不明土地になる主な原因

  • 相続登記が行われない
  • 住所変更の登記が行われない

相続登記が行われない

土地の相続の時に、登記の名義変更が行われないことによるものです。今まで、この「相続による移転の登記」は義務ではありませんでした。そのため、登記されずにそのまま放置されることがあったのです。

所有者不明土地の発生を防ぐため、不動産登記の制度が見直され、相続登記の申請が令和6年4月から義務化されました。

不動産登記法

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

出典:デジタル庁「e-Gov法令検索サイト」-「不動産登記法」(出典元

上記の申請をすべき義務があるにもかかわらず、正当な理由がなく申請を怠ったときは、10万円以下の過料が科される可能性があります。

住所変更の登記が行われない

こちらの登記も任意だったため、登記の申請が行われずに放置されるということがありました。

所有者不明土地の発生を防ぐため、住所等の変更登記の申請は令和8年4月から義務化されることになりました。

登記簿上の不動産の所有者は、所有者の氏名や住所を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請を行う必要があります。なお、正当な理由がないのに申請をしなかった場合には、5万円以下の過料の適用対象となります。

2. 所有者不明土地の問題

2-1. 所有者不明土地の問題点とは?

所有者不明土地には、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか。

所有者不明土地の問題点

  • 景観や環境への悪影響
  • 治安の悪化

景観や環境への悪影響

所有者が分からないということは、その土地は実質管理されていないということになります。そのような土地の放置が続くと雑草の繁茂や建物があればその老朽化などにより、景観が悪化します。見た目だけではなく、害虫の発生や悪臭がただよい、周辺の環境の悪化にもつながります。

治安の悪化

管理者がいない土地は、犯罪の温床となる可能性があります。不法侵入や不法投棄、建物があればさらには放火のリスクもあります。このように所有者不明土地は、地域の治安の悪化につながるという問題があります。

2-2. 所有者不明土地はどうなる?

所有者不明土地問題を解決するために、不動産登記制度が見直され、相続登記の申請の義務化などの対策がとられています。

一方、土地を相続したものの、利用する予定がなかったり、管理するための経済的な負担が大きい、などの理由で相続した土地を手放したいときはどうすればよいのでしょうか。これについては、令和5年4月27日から開始している「相続土地国庫帰属制度」を利用することができます。

この制度は、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となります。相続した土地を国に引き渡すための申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人となります。また、引き渡すためには、その土地に建物がないことなど、法令で定める引き取れない土地の要件に当てはまらない必要があります。

3. まとめ

所有者不明土地について、概要を紹介しました。所有者不明土地は、さまざまな問題が存在しています。そのような土地を発生させないためにも、制度を見直したり、創設したりして対応を行っています。

土地を相続した場合には、登記の申請が義務化されていますので、忘れずに対応をしていただければと思います。義務化された以降の相続だけではなく、それより前に相続された場合もこの義務化の対象となりますので、ご注意ください。

4. Q&A

所有者不明土地とは、何ですか?

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不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地や、所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。

所有者不明土地は、今後どうなりますか?

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不動産登記の制度が見直され、土地相続時の登記申請の義務化などにより、所有者不明土地の減少につながっていくのではないでしょうか。