住宅性能評価書とは?評価内容や取得するメリットを解説

住宅の性能について、気にしたことはありますでしょうか。住宅の性能について示されている書類が存在します。それが、住宅性能評価書です。住宅性能評価書は、第三者機関により住宅の評価を行い、その結果がまとめられたものです。住宅性能評価書を確認すると、評価項目に応じた住宅の性能がわかるのです。役割はそれだけではなく、住宅ローンやトラブル時の紛争処理に関する対応などに関してのメリットもあります。

住宅性能評価書について、メリットやデメリットとあわせて、その内容や評価項目についても紹介します。どのような内容が評価の対象となっているのかを知ることができます。要望に応じた評価基準を満たすために、設計に反映することもできます。ただし、住宅性能評価書の申請やそれに合わせた工事には費用がかかってきます。

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住宅性能評価書に記載されている評価項目の種類やそれらの評価内容について紹介しています。また、住宅性能評価書のメリットやデメリットについても紹介しています。住宅性能評価書の内容を知らなかった方や、存在を知っていてもどのように活かせるのか疑問に思っていた方などにとって、役立つ内容になっていると思います。

1. 住宅性能評価書の基本

1-1. 住宅性能評価書とは何か?

「住宅性能評価書」は、住宅性能表示制度に基づいて、交付される評価書です。これは、新築住宅を対象としており、表示基準や評価基準に異なる部分がある中古住宅に関しては、「現況検査・評価書」が存在しております。住宅性能表示制度は、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、平成12年10月に本格的に運用が開始された制度です。この制度では、住宅の性能を評価し表示するための基準や手続きが定められています。

具体的には、「住宅性能評価書」は、登録住宅性能評価機関(国土交通大臣が登録する第三者機関)が、申請に基づき、評価方法基準(国土交通大臣が定める)に従って住宅の性能評価を行った結果をまとめたものです。

そして、住宅性能評価書には、評価段階による、次の2つの種類があります。

  • 設計住宅性能評価書
    設計図書の段階の評価結果をまとめたもの
  • 建設住宅性能評価書
    施工段階と完成段階の検査を経た評価結果をまとめたもの

1-2. 住宅性能評価書の評価項目

性能評価項目は、10分野・33項目あります。そのうち、4分野内の10項目(共同住宅を対象とした項目数であり、一戸建ては8項目)が必須項目となります。残りの項目は、申請者が評価を受けるかどうかを任意に選択することができます。

住宅性能評価書の評価分野

評価分野評価内容必須項目
構造の安定に関すること柱や梁、主要な壁、基礎などの構造躯体の強さを評価する。
地震、暴風、積雪のそれぞれの影響に耐えられるかを等級で表示、免震建築物であるか否かの表示、基礎や地盤に関する情報の表示をする。
・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)
・その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)
・地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法
・基礎の構造方法及び形式等
火災時の安全に関すること火災時の安全を確保するための対策について、以下の観点から評価する。
・安全な避難を確保するための対策
・延焼を防止するための対策
劣化の軽減に関すること住宅に使用される材料の劣化の進行を遅らせるための対策がどの程度講じられているかを評価する。・劣化対策等級(構造躯体等)
維持管理・更新への配慮に関すること給排水管・給湯管及びガス管に着目して、点検や清掃、補修のしやすさを評価する。
共同住宅等については、排水管が寿命となった際、新しい排水管に更新する工事のしやすさも評価する。
・維持管理対策等級(専用配管)
※以下は、共同住宅等でのみ対象
・維持管理対策等級(共用配管)
・更新対策(共用排水管)
温熱環境・エネルギー消費量に関すること断熱等性能と一次エネルギー消費量を評価する。
・断熱等性能
 建物の外壁、窓などの断熱等性能
・一次エネルギー消費量
 暖冷房、換気、給湯、照明などの設備の性能を総合的に評価
・断熱等性能等級
・一次エネルギー消費量等級
空気環境に関すること住宅室内の水蒸気や代表的な化学物質の濃度を低減するための対策がどの程度講じられているかという観点から、基本的な対策と考えられる建材の選定と換気方法を評価する。
光・視環境に関すること住宅の窓などの開口部の効果に着目し、特に居室の開口部の面積と位置についての配慮を評価する。
音環境に関すること共同住宅の床・壁の遮音性や、住宅の外壁に設ける窓の遮音性を高める対策が、どの程度講じられているかなどを評価する。
高齢者等への配慮に関すること高齢者等への配慮のために必要な対策が、住戸内でどの程度講じられているかを評価する。
共同住宅等では、主に建物出入口から住戸の玄関までの間にどの程度講じられているかも評価する。
防犯に関すること住宅の開口部における侵入防止対策を評価する。

2. 住宅性能評価書は必要か?

2-1. 住宅性能評価書のメリット

住宅性能評価書を取得するメリットは、以下の通りです。

住宅性能評価書を取得するメリット

  • 住宅ローン控除の優遇
  • 住宅ローンの金利引き下げ
  • 地震保険料の割引
  • 専門的な紛争処理が受けられる

住宅ローン控除の優遇

<新築住宅に、令和6年~令和7年までに入居した場合>
令和6年1月以降に建築確認を受けた新築住宅の場合、省エネ基準を満たす住宅でない場合は住宅ローン減税を受けられません。
下記の省エネ基準を満たすことで、該当する住宅に応じた住宅ローンの減税を受けられます。

  • ZEH水準省エネ住宅
    日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級5以上(※1)かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅が該当します。
  • 省エネ基準適合住宅
    日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級4以上(※1)かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅が該当します。

    ※1 結露の発生を防止する対策に関する基準を除く。
住宅の種類借入限度額控除期間控除率控除限度額
(年間)
長期優良住宅4,500万円13年間0.7%31.5万円
低炭素住宅4,500万円31.5万円
ZEH水準省エネ住宅3,500万円24.5万円
省エネ基準適合住宅3,000万円21万円
その他の住宅(※2)2,000万円10年間14万円

※2令和5年12月31日までの建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものが対象

住宅ローンの金利引き下げ

住宅ローン「フラット35」を利用する場合、技術基準()を満たすことで、基準により以下のプランが適用されて金利が引き下げられます。令和6年3月31日までの申込受付分に適用されます。

技術基準については、住宅金融支援機構「フラット35サイト」 にて確認できます。

  • 【フラット35】S(金利Aプラン):金利が借入から10年間0.25%引き下げられます
  • 【フラット35】S(金利Bプラン):金利が借入から5年間0.25%引き下げられます

地震保険料の割引

住宅の耐震性に応じた地震保険料の割引を受けることができます。

  • 耐震等級割引
    品確法に基づく耐震等級を有している建物の場合、以下の割引率が適用されます。
    耐震等級2:30%
    耐震等級3:50%
  • 免震建築物割引
    品確法に基づく免震建築物の場合、50%の割引率が適用されます。

専門的な紛争処理が受けられる

建設住宅性能評価書が交付された住宅については、国土交通大臣が指定する指定住宅紛争処理機関(各地の単位弁護士会)に紛争処理を申請することができます。
指定住宅紛争処理機関は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関ですが、建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争であれば、住宅性能評価書の記載内容だけでなく、請負契約・売買契約に関する当事者間のすべての紛争の処理を扱います。紛争処理の申請手数料は、1件あたり1万円です。

2-2. 住宅性能評価書のデメリット

住宅性能評価書を取得するための申請費用がかかるということです。設計住宅性能評価書、建設住宅性能評価書、それぞれ約10万円の申請費用がかかります。評価項目を追加する場合は、申請費用や工事費用も追加でかかってきます。

3. 住宅性能評価書の取得方法

3-1. 住宅性能評価書の取得の流れ

住宅性能評価書を取得する流れを紹介します。誰が申請してもかまいませんが、図面をそろえたり、検査のための手配などがあるため、設計・施工を請け負っているハウスメーカーや工務店に依頼するのが基本となります。

打ち合わせ
着工前に申請する必要があるため、事前にハウスメーカーや工務店に相談をします。申請に必要な書類の確認や手続き方法、スケジュールなどについて、打ち合わせを行います。
設計住宅性能評価書の申請
設計図書など必要書類をそろえて、住宅性能評価機関へ設計住宅性能評価の申請を行います。
設計図書の評価
提出された設計図書などを基に評価が行われます。住宅性能評価機関が、申請に基づき、評価方法基準に従って住宅の性能評価を行います。
設計住宅性能評価書の交付
設計内容の評価が完了したときに、着工前に設計住宅性能評価書が交付されます。
建設住宅性能評価書の申請
設計住宅性能評価書を取得していることが前提となります。事前相談の上、設計住宅性能評価書や必要書類をそろえて申請します。
施工段階・完成段階の検査
建設中の各段階と竣工時の合計4回、現場検査を行います。
建設住宅性能評価書の交付
全ての検査が終了し、建物の検査済証の交付後、建設住宅性能評価書が交付されます。

4. まとめ

住宅性能評価書とは何かについて紹介しました。住宅性能評価書を取得するメリットはいくつかあります。住宅ローン控除の優遇やトラブル時の紛争処理の申請を行えるなどのメリットがありました。逆に、デメリットも存在しております。住宅性能評価書を取得するための費用がかかるということです。

住宅性能評価書の取得については、これらのメリットやデメリットを総合的に判断する必要があります。それぞれのライフスタイルや住宅にかける予算などを考慮して、検討するのがよいでしょう。

本記事では、令和5年10月現在の情報をもとに記載しています。基準等については、最新の情報と差異がある可能性もありますことご了承ください。

5. Q&A

住宅性能評価書とは何ですか?

不動産屋

「住宅性能評価書」は、住宅性能表示制度に基づいて、交付される評価書です。住宅の性能評価を行った結果がまとめられています。

住宅性能評価書を取得するメリットはありますか?

不動産屋

住宅ローン控除の優遇やトラブル時の紛争処理の申請を行えるなどのメリットがあります。ただ、申請の際に費用がかかりますので、それも併せて取得の検討をされるのがよいと思います。