不動産の相続と贈与の違いは?発生する税金の基本も押さえます
相続や贈与という言葉を耳にするたび、「どちらを選べば良いのか?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。特に不動産を持っている場合、相続や贈与に伴う税金や手続きが複雑で、事前に知識を身につけておかないと、思わぬ負担が発生することもあります。生前に贈与を考えるべきか、それとも相続のタイミングを見計らうべきか——それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解しておくことが重要です。
また、不動産を相続や贈与する場合、税金や手続きがさらに複雑になります。相続時には不動産取得税は免除される一方で、登録免許税や固定資産税といった税金がかかるため、全体のコストを見積もる必要があります。贈与の場合も、不動産の取得には贈与税以外にも追加の税金が発生するため、事前に準備をしておくことが不可欠です。
この記事では、相続と贈与の違いを明確にし、それぞれの選択肢のメリットとデメリットを具体的に解説していきます。また、不動産を含む場合にどのような税金がかかるのか、注意すべきポイントも説明します。これを読めば、自分や家族にとって最適な財産移転の方法が見えてくるはずです。ぜひ最後までお読みいただき、今後の資産計画に役立ててください。
1. 相続と贈与の基本的な定義
1-1. 相続とは?
相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産や負債を、法律に基づき相続人が引き継ぐことです。相続は、被相続人が亡くなった時点で自動的に発生します。そして、相続には下記の3種類が存在します。
相続の種類
- 単純承認
すべての財産と負債を引き継ぐ - 限定承認
負債の額が財産の額を超えない範囲で、負債を引き継ぐ - 相続放棄
すべての財産と負債を放棄する
相続は自動的に発生するため、事前に計画しておくことが重要です。特に不動産を含む相続は、相続人間のトラブルになりやすい点に注意しましょう。家族が円満に相続を進められるよう、遺言書の作成や専門家への早期相談が不可欠です。
1-2. 贈与とは?
贈与とは、生前に財産を他者に無償で譲り渡す行為です。贈与は、贈与者と受贈者双方の合意があった場合に成立します。そして、贈与には贈与が行われるタイミングにより下記の種類があります。
贈与の種類
- 生前贈与
贈与者が生存中に、自らの意思で財産を無償で他者に譲渡すること - 死因贈与
贈与者が死亡した際に贈与契約が発生する贈与の一種で、相続と似ているが、あくまで贈与契約に基づくもの - 負担付き贈与
贈与者が財産を贈与する代わりに、受贈者に特定の義務や負担を課す形の贈与
贈与は相続よりも計画的に進めることが可能ですが、税金の負担が大きくなるケースがあります。不動産の生前贈与を検討する場合、贈与税や不動産取得税だけでなく、相続時精算課税制度などの活用も視野に入れると良いでしょう。また、不動産の評価額や将来的な運用についても慎重に計画することが、無駄なコストを避けるためのポイントです。
2. 税金の違い
2-1. 相続税
相続税は、被相続人が死亡した時に相続人が受け取る財産に対して課される税金です。基礎控除額を超える財産に対して課税され、税率は取得する財産額に応じて段階的に上昇します。
相続税は、相続財産の額に基づいて計算され、2024年現在、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。これを超える部分に対して、10%~55%の累進課税が適用されます。例えば、遺産総額が6,000万円で、相続人が2人の場合、基礎控除は「3,000万円+600万円×2=4,200万円」ですので、残りの1,800万円に相続税が課されます。
不動産が相続財産に含まれる場合、現金に比べて評価額が低くなることがあるため、相続税を節約できる可能性があります。ただし、不動産を相続する場合、売却しないと現金を用意できないケースがあるため、納税資金の準備や分割方法の事前相談をしておくことをおすすめします。特に、不動産の売却に時間がかかる場合や、納税猶予制度を利用できるケースもありますので、専門家に相談することが重要です。
2-2. 贈与税
贈与税は、生前に他者に財産を譲渡した際に発生する税金です。贈与を受けた人ごとに年間110万円までの財産は非課税となりますが、それを超える部分には課税されます。
贈与税は、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの制度があります。暦年贈与では、年間110万円までが非課税です。これを超える贈与には、10%~55%の税率が段階的に適用されます。相続時精算課税制度では、贈与を受けた人ごとに年間110万円までが非課税となる基礎控除と、贈与をした人ごとに累積で2,500万円まで非課税となる特別控除とがあります。これらの控除額を超えた部分に一律20%の税率が適用されます。
贈与は計画的に行うことが重要です。特に不動産を贈与する際は、贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税などの追加費用も考慮する必要があります。また、相続時精算課税制度を利用する場合、将来の相続税の負担にも影響を与えるため、税務面での戦略を立てることが不可欠です。事前に税理士や不動産専門家と相談し、最適な方法を選びましょう。
2-3. 相続と贈与で発生するその他の税金
相続と贈与では、相続税や贈与税以外にも、不動産に関連する税金が発生します。代表的なものとして「不動産取得税」「登録免許税」「固定資産税」があります。
相続・贈与時のその他の税金
- 不動産取得税
通常、不動産取得税は相続による取得では非課税となるため、相続による取得では課されません。しかし、贈与や交換などの場合には課税対象となります。 - 登録免許税
相続や贈与により名義変更を行う際にかかる税金です。不動産の登記手続きに伴い、固定資産税評価額に一定割合を乗じた金額が登録免許税として課税されます。 - 固定資産税
毎年課される税金で、所有している不動産の評価額に基づいて計算されます。相続・贈与に関わらず、不動産の所有者に課税されます。
不動産を相続・贈与する際には、税金のトータルコストをしっかり把握することが重要です。相続の場合、不動産取得税が免除されるため、有利な面もありますが、贈与の場合は高い税率が適用されるため、計画的な対策が必要です。
3. 相続と贈与のメリット・デメリット
3-1. 相続のメリット・デメリット
相続は、相続税の控除が大きい点がメリットですが、突然の相続に備えることが難しいデメリットもあります。
相続では、基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となり、比較的多額の控除が受けられるため、大きな財産を相続する場合に有利です。
相続税は、基礎控除が大きく、ある程度の財産は税金がかかりません。さらに、配偶者控除や未成年者控除、障害者控除など、追加の控除があります。一方、突然の死亡による相続では、相続人が納税資金を準備できないケースがあります。さらに、相続人が複数いる場合には、遺産分割協議が必要になるため、家族間でトラブルが生じる可能性があります。
事前に相続に関するシミュレーションを行い、最適なプランを練ることをおすすめします。税理士や不動産の専門家に早めに相談することで、トラブルを避けることができます。
3-2. 贈与のメリット・デメリット
贈与は、生前に財産を計画的に移転することで、相続税対策や財産管理の円滑化が期待できますが、贈与税の負担が大きく、税金を含む手続きが煩雑である点がデメリットです。
贈与の最大のメリットは、生前に計画的な財産分配が可能なことです。暦年課税を利用して、毎年110万円までの財産を非課税で贈与できるほか、一定の条件はありますが、住宅取得等資金に係る贈与の特例などを活用することで、大きな贈与も一定額まで非課税で行えます。
一方、贈与税は相続税に比べて税率が高く、金額が大きいほど税負担が重くなります。また、不動産の贈与には、不動産取得税や登録免許税などの追加コストも発生するため、総合的なコストを事前に計算しておく必要があります。
贈与は、特に不動産を含む場合、税金や手続きが煩雑で、事前の準備が必要です。特に、住宅取得等資金に係る贈与の特例を利用する場合、不動産の種類や用途によって適用条件が異なるため、専門家に確認してから進めることをおすすめします。また、贈与税と不動産関連の税金を事前にシミュレーションし、トータルのコストを見極めた上で計画を立てることが重要です。
4. まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
相続と贈与は、財産の移転において重要なテーマですが、それぞれにメリット・デメリットが存在します。相続は、相続税の基礎控除が大きいため、多額の財産でも税金を抑えることが可能ですが、突然の相続では納税資金が不足する恐れがあります。一方、贈与は生前に計画的に財産を移転でき、毎年110万円まで非課税で贈与できる点が大きなメリットです。しかし、贈与税は相続税よりも税率が高くなるため、贈与のタイミングや金額には慎重な計画が必要です。
また、不動産に関わる場合、相続や贈与にかかる税金以外にも、不動産取得税や登録免許税といった追加のコストが発生するため、全体的な税負担を見積もることが重要です。相続時には、現金の用意が難しい場合も多いため、不動産の売却や納税猶予制度の利用を検討する必要があります。不動産に関する対応は専門的な知識が必要なため、税理士や不動産のプロと早めに相談し、最適なプランを練ることが成功の鍵です。
5. Q&A
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相続税と贈与税の違いは何ですか?
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相続税は、被相続人が亡くなった時に相続人が受け取る財産に課される税金で、相続財産額が基礎控除(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)を超える部分に対して課税されます。一方、贈与税は生前に財産を譲渡した際に課され、年間110万円までの財産が非課税ですが、それを超える部分に対して累進課税が適用されます。相続税に比べ、贈与税の税率は一般的に高くなります。
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相続と贈与の選択で注意すべき点は?
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相続と贈与のどちらを選択するか考える際、以下の点に注意が必要です。
- 相続は、基礎控除が大きく、配偶者控除などを活用すれば多くの財産が非課税で相続できる可能性がありますが、突然の相続では納税資金が準備できないことがあります。
- 贈与は計画的に行える一方、贈与税が高額になる可能性があるため、事前にコストを把握し、税理士や専門家に相談することが重要です。