再建築不可物件はなぜできるのか?問題点や解決策も紹介

再建築不可物件という言葉を聞いたことはありますでしょうか。なぜ、このような物件が存在するのでしょうか。再建築不可物件の基本理解から問題点、解決策などを解説します。再建築できない問題だけでなく、そこから派生する問題もあります。それらに対応するための解決策もありますので、ぜひ参考にしてください。

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この記事では、再建築不可物件に焦点を当て、その基本理解から問題点、解決策などを解説します。再建築不可物件に興味を持ち、そのポテンシャルを最大限に引き出す方法を探求する方々にとって、貴重な情報が詰まったガイドになればと思います。

1. 再建築不可物件の基本理解

1-1. 再建築不可物件とは何か?

再建築不可物件は、現在の建物が崩壊や撤去後に新たに建て替えることが不可能な不動産物件のことを指します。

建築基準法では、「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない(43条1項)。」と定められています。これを、接道義務といいます。そして、「「道路」とは、幅員4m以上のものをいう(42条1項)」と規定されています。ただし、幅員4m未満の道路でも、42条2項道路に該当する場合は、「道路」と認められます。(42条2項道路については、「セットバック 」の記事の中で解説しています)

この接道義務を果たしていない物件が、再建築不可物件に該当します。

なぜ、接道義務が規定されているかというと、次のような理由によります。例えば、災害時に、敷地内に住んでいる人が道路を使ってほかのところへ避難したり、道路を緊急車両が通れるようにする必要があるため、接道義務を規定しています。

1-2. 再建築不可物件の現状

先述した通り、接道義務を果たしていない物件は、再建築不可物件になります。この接道義務は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用されます(41条の2)。東京23区は都市計画区域となっていますので、23区を例に確認してみます。

区分住宅数(総数に対する割合)
東京23区の住宅総数490万1,200戸
幅員2m未満の道路に接している18万2,700戸(約3.7%)
敷地が道路に接していない5万9,900戸(約1.2%)
出典:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 追加集計」(出典元)の情報を基に作成

「幅員2m未満の道路に接している住宅数」と「敷地が道路に接していない住宅数」の合計は、24万2,600戸となります。東京23区の住宅総数の約4.9%にあたります。これらの住宅のうち、接している道路が42条2項道路に該当する場合もありますので、全てが再建築不可物件にあたるわけではありません。それでも、約24万戸の物件がそういった物件に該当しています。

2. 再建築不可物件の問題点

建築基準法は、昭和25年(1950年)に施行されました。また、都市計画法は、昭和44年(1969年)に施行されました。そのため、昭和25年より前に建てられた物件や昭和44年より前に建てられた物件の中には、接道義務を果たしていない物件が存在します。その再建築不可物件には、どのような問題があるのでしょうか。

2-1. 建物を再建築できない

再建築不可物件では、既存の建物を新たに建て替えることができません。これは、自ら取り壊した場合以外にも、地震や火災などにより建物が消失した場合にも建て替えることができません。

再建築不可物件の最大の問題点は、建物の老朽化や損傷が解決しにくいことです。法律的な制約により、新たな建物の建設が難しく、住環境や安全性に関する懸念が生じます。

2-2. 住宅ローンの借り入れが難しい

再建築不可物件の購入には、通常の住宅ローンを利用するのが難しいことがあり、資金調達に課題が生じます。住宅ローンは、建物の価値を担保に借り入れる仕組みですが、再建築不可物件は建物の価値が制限されているため、担保としての評価が難しい場合があります。これにより、住宅ローンの借り入れが難しくなります。

これは、再建築不可物件の購入者だけではなく、所有者にも影響します。住宅ローンの借り入れが困難となると、買い手の資金調達が難しくなかなか売却できないということになりえるからです。

3. 再建築不可物件を建築可能にするには

3-1. セットバックを行う

敷地に面している道路の幅員が4m未満の場合は、セットバックを行うことで、建築基準法の「道路」とみなされ、接道義務を果たすことができます。

接道義務を果たすということは、建物を建て直すことが可能となるのです。ただ、セットバック部分は道路になるため、建築物を建てられません。よって、門や塀、駐車場などを設置することができませんので、注意が必要です。

3-2. 隣地を購入する

敷地が道路に接していない場合や道路に2m未満しか接していない場合は、隣地を購入することで接道義務を果たすことができます。隣地の購入により、2m以上の幅で道路に接することができれば、接道義務を果たせます。

隣地を購入できるかは、隣地の所有者との話し合いとなります。個人間で話すのはハードルが高いと思いますので、不動産会社を通じて交渉することも考えられます。

3-3. 43条2項に基づく申請を行う

建築基準法43条1項により、建築物の敷地には、接道義務があります。ただし、43条2項1号や2号にその例外規定があります。下記の要件が認められれば、建築基準法上の接道義務を果たしていなくとも再建築が可能となります。

建築基準法

(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。

一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの

二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

出典:デジタル庁「e-Gov法令検索サイト」-「建築基準法」(出典元

この43条2項に掲げられている例外規定の認定や許可の基準は、自治体により異なりますので、対象の自治体の窓口へ確認する必要があります。

4. まとめ

再建築不可物件とは、法令の制限により新しい建物を建てることができない不動産物件のことです。

再建築不可物件は、所有者自ら建物を撤去した場合たけでなく、地震や火災により消失した場合にも再建築ができません。そのような制約により、住環境や建物の安全性に懸念が生じます。さらに、建物の価値が制限されていることにより売却等も難しくなります。

ただ、再建築不可物件を建築可能にするためのアプローチもあります。セットバックや隣地の購入、各自治体への接道義務の例外適用のための申請などになります。

建築不可物件の所有者や購入検討者は、これらの問題点や解決方法などを踏まえて、建築不可物件をうまく活用いただければと思います。

5. Q&A

再建築不可物件とは何ですか?

不動産屋

再建築不可物件とは、現在の建物が崩壊や撤去後に新たに建て替えることが不可能な不動産物件のことを指します。

再建築不可物件を建築可能にする方法は何ですか?

不動産屋

再建築不可物件を建築可能にする方法はいくつかあります。

  • セットバック
    セットバックを行うことで、建築基準法の「道路」とみなされ、接道義務を果たすことができます。
  • 隣地を購入する
    隣地所有者との話し合いなどが必要になり、それなりにハードルが高いと思います。
  • 43条2項の申請
    自治体により認定や許可の基準が異なってきますので、対象自治体の窓口へ確認するのがよいでしょう。