不動産取引必須!登記簿謄本とは?
不動産取引や所有権に関する法的手続きを進める際、正確な情報と信頼性が不可欠です。そこで注目すべきなのが、「登記簿謄本(登記事項証明書)」です。この公的な文書は、不動産の所有権や権利関係を証明するための大切なものとなります。
「登記簿謄本とは何か?」から始まり、その種類や記載情報についての基本的な知識を理解することで、不動産取引の際に自信を持って進めることができます。表題部や権利部(甲区、乙区)、共同担保目録など、それぞれの部分にどのような情報が含まれるのかを理解することで、取引の透明性が高まります。
さらに、取得方法についても気になるところでしょう。窓口での取得、郵送での請求、そしてインターネットを通じたオンライン請求の3つの方法があります。申請方法や費用などを確認し、自身のニーズに合った方法を選ぶことが大切です。
この記事では、登記簿謄本と登記事項証明書の違い、そして、その基本から取得方法まで、詳しく解説しています。不動産取引や法的手続きにおいて重要な情報を手に入れるために、ぜひこれらの情報をしっかりと把握しましょう。信頼性のある情報を手に入れ、安心して不動産取引を進めるための第一歩を踏み出しませんか?
1. 登記簿謄本の基本を理解する
1-1. 登記簿謄本とは
登記簿謄本の説明の前に、似た言葉である「登記事項証明書」について説明します。登記簿謄本との違いは、なんでしょうか。実は、これらは同じものを指していると理解してよいのです。
登記簿謄本は、謄本とあるように原本(登記簿)の内容を複写した文書ということになります。紙媒体の登記簿の内容を複写して証明しているものが登記簿謄本です。現在、登記内容はコンピュータ管理システムにより記録を行っています。そして、登記事項証明書は、データで管理している登記内容を印刷して証明したものになります。
以降の解説は、登記事項証明書を前提としたいと思います。
登記事務をコンピュータで処理している登記所では,登記事項は磁気ディスクに記録されており,その内容を用紙に印刷し,証明したものが登記事項証明書です。
出典:松山地方法務局(出典元)
登記事務をコンピュータで処理していない登記所では,登記事項を直接登記用紙に記載しており,その用紙を複写し,証明したものが登記簿謄本です。
名称が異なるだけで,どちらも証明内容は同じです。
登記事項証明書(登記簿謄本)は、不動産の所有権や権利関係の記録を示したものです。不動産登記は、土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし、取引の安全と円滑をはかる役割をはたしています。
登記事項証明書(登記簿謄本)は、不動産の権利関係に関する公的な記録であり、不動産取引や法的手続きにおいて重要な役割を果たします。
1-2. 登記事項証明書(登記簿謄本)の種類
主な登記事項証明書の種類には、以下のものがあります。
登記事項証明書の種類
- 全部事項証明書
登記記録の内容がすべて記載された登記事項証明書です。 - 現在事項証明書
登記記録のうち、現時点で有効な登記事項のみが記載された登記事項証明書です。抹消された権利関係については記載されていません。 - 一部事項証明書
登記記録の一部のみが記載された登記事項証明書です。
マンションのような区分所有者が多い場合などは、すべての情報を取得しようとすると膨大な情報量になります。そのため、自分自身に関する登記記録など、一部だけ必要な場合には一部事項証明書が適しています。 - 閉鎖事項証明書
土地の合筆など、閉鎖された登記記録が記載された登記事項証明書です。
閉鎖された登記記録は、全部事項証明書や現在事項証明書などには記載されていません。
2. 登記事項証明書(登記簿謄本)の記載情報
出典:QRコード(二次元バーコード)付き書面申請の開始と登記事項証明書(不動産登記)の様式変更について
【参考1】 登記事項証明書(不動産登記)の見本(土地・PDF形式)
2-1. 表題部
表題部は登記事項証明書の冒頭にあり、土地や建物の物理的な概況が記録されています。
土地の場合、所在や土地の利用目的、土地の面積などが記録されています。
建物の場合、所在や建物の用途や構造、床面積などが記録されています。
2-2. 権利部(甲区)
権利部には、不動産の権利に関する情報が記録されています。そして、権利部は甲区と乙区に分かれています。
権利部(甲区)には、不動産の所有者の情報など所有権に関する情報が記載されています。
2-3. 権利部(乙区)
権利部(乙区)には、抵当権や賃借権など、所有権以外の権利に関する情報が記載されています。
不動産にどのような権利が設定されているかを確認することができます。
2-4. 共同担保目録
共同担保とは、一つの債権の担保として複数の不動産に対して抵当権を設定することです。そして、共同担保目録は、その担保の対象となっている不動産の一覧を記録したものです。
例えば、住宅ローンを借りる際に、土地と建物の両方を担保として抵当権を設定することがあります。その土地と建物が共同担保目録に記録されます。
3. 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法
3-1. 窓口での取得
登記事項証明書の交付を請求する場合には、請求対象の土地や建物を管轄する登記所の窓口、または、最寄りの登記所の窓口に、必要事項を記載した請求書を提出する必要があります。
手数料は、1通当たり600円です。
手数料は、請求書に収入印紙を貼って納付しますので、現金での納付はできません。
3-2. 郵送での請求
登記事項証明書の交付を郵送でする場合には、請求対象の土地や建物を管轄する登記所、または、最寄りの登記所に、必要事項を記載した請求書を郵送する必要があります。その際、返信用の切手及び返送先の宛先を記載した封筒、または、メモを同封します。
手数料は窓口での請求と同様、1通当たり600円です。
窓口での請求と同じく、請求書に収入印紙を貼って納付しますので、現金での納付はできません。
3-3. オンラインでの請求
登記事項証明書は、インターネットを利用してオンラインで請求することができます。
手続きについては、「登記・供託オンライン申請システムホームページ」に案内があります。
(登記ねっと 不動産登記手続 「登記事項証明書/地図・図面証明書の交付請求 」(出典元))
オンライン請求の対象
- 全部事項証明書
- 現在事項証明書
- 閉鎖事項証明書(電磁的記録に記録されているものに限ります)
※一部事項証明書は、窓口や郵送での請求を利用する必要があります。
受け取り方法
- 請求者が指定した登記所の窓口で受け取る
- 請求者が指定した住所に送付して受け取る
手数料
窓口や郵送での請求では、1通について600円必要ですので、オンラインの方が安く交付請求できます。また、手数料の納付は、インターネットバンキングや電子納付対応のATMなどを利用して行います。
- 登記所の窓口で受け取る場合
1通について480円 - 登記所から送付して受け取る場合
1通について500円
4. まとめ
登記事項証明書(登記簿謄本)は、記録された不動産の権利内容を示したものです。そこに記載されている内容や取得方法を正しく理解することで、不動産取引における安心感と法的保障を確保しましょう。窓口や郵送、オンラインで交付申請ができ、これらの選択肢の中から最適な方法を選ぶことで、ニーズに合った申請をすることができます。
なお、当記事で紹介した、取得方法などについては、令和5年8月現在の内容になります。最新の情報については、法務省や法務局のホームページなどでご確認ください。
5. Q&A
-
登記簿謄本とは何ですか?
-
登記簿謄本は、登記事項証明書と同様に、不動産の所有権や権利関係の記録を示したものです。不動産取引や法的手続きにおいて重要な役割を果たします。
-
登記事項証明書(登記簿謄本)には何が記載されていますか?
-
登記事項証明書は大きく4つに分かれており、以下の内容が記載されています。
①表題部:土地や建物の物理的概況
②権利部(甲区):所有権情報
③権利部(乙区):所有権以外の権利に関する情報
④共同担保目録:担保対象である複数の不動産の一覧情報